横浜地方裁判所 昭和51年(ワ)1682号 判決 1977年11月11日
主文
一 横浜地方裁判所昭和五一年(手ワ)第二三二号事件手形判決を認可する。
二 異議後の訴訟費用は、被告の負担とする。
事実
一 当事者の申立
(一) 原告
主文と同旨。
(二) 被告
1 前記事件の手形判決(以下「手形判決」という)の取消を求める。
2 原告の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、手形訴訟、異議訴訟を通じて原告の負担とする。
二 請求の原因(原告)
本件約束手形の振出年月日は、白地であつたが、原告が補充したと述べたほかは、手形判決の事実記載と同じであるから引用する。
三 抗弁
1 本案前
本件訴訟は、すでに横浜地方裁判所昭和四九年(手ワ)第二二五号約束手形金請求事件手形判決(前件訴訟と略称する)において、原告敗訴の判決が確定しているから、二重起訴として却下されるべきである。すなわち、前件訴訟は、原告が白地(振出年月日)を補充しないまま訴訟を提起したので、「請求棄却」の判決を受け、原告において、異議を取下げて確定したものである。そして、最高裁昭和四五年一一月一一日判決によると、白地手形も法律上手形としての効力を有しないものではないことを明示しているとおり、本件訴訟は二重起訴として許されない。
2 権利濫用
前件訴訟において、自ら申立てた異議を自ら取下げ、請求の意思を放棄し、権利を放棄しているのに、本件訴訟を是認するとすれば、被告を著るしく不安定な立場におくといわなければならないので、原告の行為は権利の濫用にあたる。
3 悪意の抗弁
本件手形は、被告から受取人有限会社梅田産業に工事代金の支払として振出されたものである。しかるに、右の有限会社梅田産業は工事を着工しないまま、昭和四九年六月末ころ倒産してしまつたが、債権者の一人である原告は、他の債権者らと債権者集会なるものを開き、右の倒産後において、しかも、本件手形が振出された実情を十分知りながら、本件約束手形を取得したものである。
四 証拠(略称)